「働き方改革を進めたいけれど、管理職が動かない」
「制度を導入しても、現場での運用が止まってしまう」
そんな課題を抱えている企業は少なくありません。
その多くに共通するのが、“中間管理職がボトルネック”になっている構図です。
今回は、なぜ管理職が働き方改革を阻んでしまうのか?そして、どうすればその“無意識の抵抗”を超えていけるのか?を考えていきます。
1. 管理職が働き方改革に抵抗する理由とは?
改革を“止めている”ように見える管理職も、実は個人として反対しているわけではないケースがほとんどです。背景には、次のような複雑な事情があります。
■ 結果責任があるから、リスクを取りたくない
→ テレワークやフレックスを部下に認めて失敗したら、責任を問われるのは管理職自身。新しい制度を使わせるより、従来通りのやり方の方が“安全”なのです。
■ 評価制度との不整合
→ 働き方改革を進める一方で、評価軸が「稼働時間」や「上司の目に見える努力」に偏っていると、部下の柔軟な働き方を推奨しにくくなります。
■ 「改革推進」が自分の評価項目になっていない
→ 経営層から「改革を進めろ」と言われても、それが自分の人事評価に関係ないなら、どうして優先的に取り組む必要があるでしょうか。
2. 管理職に「働き方改革の意義」を腹落ちさせるには?
中間管理職が変わらないと、現場も変わりません。
そのためにまず必要なのが、彼らに**“改革の当事者”としての意識を持ってもらうこと**です。
✅ 経営メッセージを管理職向けに「翻訳」する
「生産性向上」や「多様な働き方推進」といった抽象的な方針だけでは、現場管理職は動けません。
「業務の属人化を防ぐこと」「部下のモチベーションを高めることで成果につなげること」など、“自分のマネジメント課題とどうつながるのか”を言語化することが重要です。
✅ 「やってよい」「失敗しても責めない」という明確な保証
心理的安全性がないと、行動は変わりません。小さな実験的取り組みを認め、成果だけでなく「挑戦した姿勢」も評価する文化を示しましょう。
✅ 改革を「業績貢献」につなげる支援をする
働き方改革が「単なる負担増」になってしまわないよう、業務の見直しやDX支援、属人化解消の取り組みなどとセットで進めることが理想です。
3. 「現場任せ」にしない仕組みづくりを
改革が管理職任せになってしまうと、組織の中で「やる人とやらない人」の差が生まれ、かえって不公平感が増します。
◼ 部署横断の推進チームを設ける
人事・総務に限らず、現場の管理職や経営層も巻き込んだ横断チームを作ることで、「経営と現場の橋渡し」ができます。
◼ 管理職向けの「対話の場」をつくる
研修や意見交換の場を設け、他部門の事例や悩みを共有することで、孤立感や抵抗感を和らげることができます。
まとめ
- 管理職が働き方改革に消極的な背景には、「責任」「評価」「目的不明瞭」などの構造的要因がある
- 管理職にとっての“改革の意味”を丁寧に伝えることが不可欠
- 推進は現場任せにせず、全社的な支援と仕組みづくりを
次回は、「『時短』だけが改革ではない—成果主義と納得感のバランスをどうとるか」と題し、時間削減偏重の改革に潜む落とし穴と、成果を出せる働き方改革のあり方を掘り下げます。