働き方改革というと、
「残業時間の削減」
「所定労働時間の短縮」
「効率化による時短」
といった“時間”の削減に注目が集まりがちです。
もちろん、長時間労働の是正は改革の大きな柱です。しかし、「時短」だけが目的になってしまっていないか、今こそ立ち止まって考えてみる必要があります。
時間を減らすことにばかり意識が向くと、「早く帰ること」が目的化し、かえって納得感のない成果主義や働きづらさを招くリスクがあるのです。
1. 時短偏重がもたらす“副作用”とは?
■「効率だけ」が重視され、質よりスピードに偏る
短時間で成果を出すことが求められるあまり、じっくり考える仕事が敬遠され、「手早くできること」が評価されがちに。
■ 個人間の“時間努力”が見えにくくなる
例えば子育てや介護との両立で時短勤務の人と、長く働ける人の間に「評価の不公平感」が生まれやすくなります。
■「早く帰る」=「働いていない」という誤解が生まれる
職場の意識が追いつかないまま「早く帰れ」が徹底されると、むしろ働き手のストレスや孤立を招くこともあります。
2. 改革の本質は、“時間”ではなく“成果と納得感”の両立にある
働き方改革の目的は、単に労働時間を短くすることではなく、限られた時間の中でいかに成果を出し、個人と組織の満足度を高めるかにあります。
そのためには、以下のような視点が不可欠です。
✅ 時間ではなく「貢献」や「価値」を評価する仕組みへ
「誰が何時間働いたか」よりも、「どのような成果を出し、組織にどう貢献したか」を見える化することが、納得感ある評価と柔軟な働き方を両立させます。
✅ 定量評価だけでなく“プロセス”や“対話”を重視
特に定性業務やチーム貢献が多い職場では、「数字だけの成果主義」は限界があります。上司との1on1や、チーム内でのフィードバックを重ねることが重要です。
✅ “成果の基準”をすり合わせる機会を持つ
時間や場所がバラバラでも、何を成果とするかが曖昧だと、メンバー間の誤解や不満が生まれます。評価基準の透明化や、マネージャーによる説明責任が求められます。
3. 「働きやすさ」と「働きがい」のバランスが組織を強くする
改革の中で忘れてはならないのが、働く人の“納得感”と“やりがい”です。
たとえば:
- 「時間を減らせた」だけではなく、「自分の力を発揮できている」実感があるか
- 「会社に合わせる」ではなく、「会社が自分の働き方に合わせてくれている」と感じられるか
- 「時間ではなく価値で見てもらえている」安心感があるか
このような視点が揃ってこそ、本当の意味での“成果主義”が機能し、社員が自律的に働ける組織文化が生まれます。
まとめ
- 働き方改革の目的は「時短」ではなく「成果と納得感の両立」
- 評価制度を「時間軸」から「価値・貢献軸」へシフトさせることが鍵
- 働きやすさと働きがい、その両方を支える仕組みが持続的成長を生む
次回は、「“働きやすい”の落とし穴 — 優しいだけの職場が抱える問題とは?」というテーマで、「改革のやりすぎ」や「甘さ」が生む新たな課題について掘り下げていきます。