制度をつくった。
ルールを整備した。
説明会も開いた。
——それでも、現場が動かない。
働き方改革の推進において、最も多く寄せられる悩みがこれです。
「制度は整ったのに、なぜ現場は変わらないのか?」
その答えは一つ。「腹落ちしていない」からです。
つまり、従業員一人ひとりが、自分ごととして納得していないのです。
今回は、現場の納得感を高め、実行へとつなげるための「伝え方」「巻き込み方」「対話のあり方」に焦点を当てます。
1. 現場が「腹落ち」しない3つの典型パターン
■ パターン①:経営目線の話ばかりで、自分に関係があると思えない
「生産性向上」や「競争力強化」という言葉は、現場にとっては遠い話です。
**「それが自分の働き方にどう関係するのか」**が見えなければ、動きません。
■ パターン②:形式的な説明で終わっている
「制度の使い方」だけ説明され、「なぜやるのか」「何を変えたいのか」といった背景や目的が語られないと、受け手の理解は浅くなります。
■ パターン③:「上からの押し付け」に感じられている
従業員にとって「また何か始まった」「決められたからやらされている」という印象になってしまうと、表面的な行動しか取られません。
2. 現場が“自分ごと化”するコミュニケーション術
現場に変化を起こすには、「伝える」だけでなく「納得してもらう」ことが必要です。以下の3つが特に重要な観点です。
✅ ① 「WHY」から語る:目的と背景をセットで伝える
制度の概要ではなく、「なぜ今、改革が必要なのか」「どんな問題を解決したいのか」から始めることで、従業員の共感と関心を引き出せます。
✕「来月から在宅勤務制度を導入します」
◎「通勤時間や家庭事情で困っている声が多く、柔軟な働き方が求められています。そのために——」
✅ ② 「あなたにとってのメリット」を明確にする
制度導入の狙いが組織目線だけで語られると、従業員は「自分には関係ない」と感じがちです。個人の立場でどんな良いことがあるのかを示しましょう。
例:
- 仕事の裁量が広がる
- 通勤ストレスが減る
- 子育てや介護との両立がしやすくなる
✅ ③「一方通行」ではなく「双方向」の対話にする
一度の説明会で終わらせず、小規模な座談会、意見交換、1on1などの場を通じて、疑問や不安を受け止めることが大切です。
「話せる場がある」という安心感が、現場の理解と協力を促進します。
3. 「声を聴く」ことが、推進力になる
制度を“現場仕様”にするには、実際に使う人の声を反映させることが不可欠です。
そのためにも、次のような継続的な対話の場づくりをおすすめします。
◼ 意見回収→改善→フィードバックのサイクルをつくる
アンケートや面談での意見を拾い、可能な限り制度や運用に反映し、変更点は「●●さんの声で変わりました」と伝える。
この繰り返しが、現場の信頼を築きます。
◼ 「現場の代表者」=チャンピオンを巻き込む
改革に理解ある現場リーダーやミドル層を早期に巻き込み、現場発の推進役にすることで、現実的な落とし込みが可能になります。
まとめ
- 現場が動かないのは「腹落ち」していないから
- 説明ではなく「対話」と「納得」を重視する
- WHYから語り、個人のメリットに落とし込み、双方向で進めることが肝要
次回は、「DXと働き方改革—システム導入だけでは何も変わらない」と題し、デジタルツール導入が目的化してしまう失敗例と、真の“業務改革”につながるアプローチを解説します。