「せっかく働き方改革を進めたのに、人が定着しない」
「制度は整えたのに、職場の空気がギスギスしている」
「会議で本音が出てこない、若手が何も言わない」
こうした相談は、働き方改革を支援する中で本当によく聞きます。
どれだけ制度を充実させても、人が安心して声を上げられない職場では、本当の意味での改革は根づきません。
今、多くの企業で注目されているのが、「心理的安全性(Psychological Safety)」です。
1. 心理的安全性とは何か?
心理的安全性とは、
「このチームでは、何を言っても否定されない」
「自分の意見を言っても、恥をかかされない」
という、チーム内の安心感のことです。
もともとはGoogleのプロジェクト研究で「成果を出すチームの共通点」として話題になりました。
ポイントは、「仲良し集団」ではなく、意見の対立や違いを安心して出し合える土壌があることです。
2. 心理的安全性が低い職場で起こること
- 会議で意見を言わない(言えない)
- 上司の前では「わかりました」と言うが、内心は納得していない
- 問題があっても現場で隠す
- ミスが共有されず、同じ失敗が繰り返される
- 挑戦するより「波風を立てない」行動が優先される
これでは、働き方改革で目指す自律性や創造性は生まれません。
3. 心理的安全性を高める3つのポイント
✅ ① 小さな発言でも「聞く姿勢」を示す
意見を言いやすくするには、管理職や会議の進行役が、
「否定しない・さえぎらない・最後まで聞く」
という姿勢を徹底することが大前提です。
どんな小さな発言でも「ありがとう」と受け止めるだけで、発言する人のハードルはぐっと下がります。
✅ ② ミスや課題を“オープン”にする仕組みをつくる
「問題を報告したら怒られる」という空気があると、誰も報告しなくなります。
むしろ、ミスや課題を共有することを「当たり前」にすることで、再発防止や学びにつながります。
- 失敗事例をチームで振り返る
- 改善提案を表彰する
- 「報告が早かったこと」を評価する
こうしたルールや文化が、安心感を生みます。
✅ ③ 「上からの評価」だけでなく「横のつながり」を強化する
心理的安全性は、上下関係だけでなく同僚同士の関係性でも生まれます。
- 1on1だけでなく、チーム内での雑談タイム
- 成果だけでなく「ありがとう」を伝え合う仕組み
- 部署横断のプロジェクトで、普段話さない人と関わる機会を増やす
こうした“ちょっとしたつながり”が、普段の発言や行動を後押しします。
4. 制度より空気、ルールより対話
心理的安全性は制度ではなく、日々のコミュニケーションの積み重ねで育まれます。
- 「ちゃんと聞いてくれる」
- 「失敗しても大丈夫」
- 「何を言っても無視されない」
こうした空気があるからこそ、
制度が活き、働き方の選択肢が使われ、挑戦する人が増えるのです。
まとめ
- 働き方改革の土台は「心理的安全性」
- 意見を言いやすい・ミスを共有しやすい・仲間とつながれる職場づくりが鍵
- 小さな対話の積み重ねが、人が辞めない組織をつくる
次回は、「『なんとなく不満』を言える職場が強い — 離職防止の新常識」をテーマに、従業員がモヤモヤを溜め込まずに済む環境づくりについて掘り下げます。