「働き方改革、うちでは人事部が中心で進めています」
「総務がテレワーク制度の管理をしています」
——このように、人事や総務が中心になって進めているケースは多いと思います。
もちろん、制度設計や規程整備など、初動において人事・総務が果たす役割は非常に重要です。
しかし、改革が“人事部の仕事”のままで止まってしまうと、現場には根づきません。
働き方改革を真に企業文化として定着させるには、「部門横断」で推進する体制づくりが不可欠です。
1. なぜ“人事部任せ”ではうまくいかないのか?
■ 部署ごとの業務特性を理解しきれない
現場に合わない制度を押し付けてしまうと、形骸化や反発が起きやすくなります。
■ 改革の優先順位が共有されていない
「また本社が勝手に始めた」という印象を持たれると、現場の協力は得られません。
■ 部門間で温度差が生まれる
ある部署だけが積極的、別の部署は様子見…という状態では、改革は社内に浸透しません。
2. 改革を“全社プロジェクト”として進めるための3ステップ
✅ ステップ①:現場を巻き込む「推進チーム」を編成する
- 各部門から1名ずつ“現場代表”を選出し、実行部隊を部門横断で構成します。
- 職種や年齢・階層もバラけさせると、組織全体の声が反映されやすくなります。
👉 推進チームは、制度運用の実態把握、改善案の提案、社内の意識啓発などを担います。
✅ ステップ②:部門ごとの課題を“見える化”する
- テレワークやフレックスが難しい部署では、**「なぜ難しいのか」**を対話で明らかにします。
- IT、製造、営業、管理部門ではそれぞれに合った改革のアプローチが必要です。
👉 一律の制度を押しつけるのではなく、「それぞれの最適解」を一緒に探すことが重要です。
✅ ステップ③:「全社共通」と「部門独自」を分けて設計する
- 全社で統一すべきルール(例:労働時間管理、安全衛生)と、部署ごとの裁量に委ねる運用(例:出社・在宅の頻度、ツールの使い方)を明確に分けます。
👉 これにより、「柔軟性と統一感」を両立させ、納得感ある運用が実現します。
3. 改革は“経営の関心事”であると示すことが最重要
現場やミドル層を巻き込むには、経営層が明確に旗を振ることが必要です。
- 「働き方改革は一部門の仕事ではなく、会社全体の競争力の源泉である」
- 「この取り組みに全社員の協力を求めている」
というメッセージを、経営トップが発信するだけで、組織の空気は変わります。
まとめ
- 働き方改革を“人事任せ”にせず、部門横断で進める体制づくりが必要
- 現場を巻き込み、部署ごとの事情に寄り添った運用設計がカギ
- 経営層が「全社の優先事項」として明確にメッセージを発信することが成功の土台
10回にわたってお届けしてきた「働き方改革推進者向けブログシリーズ」。
今回は一区切りとなりますが、今後も引き続き、組織文化に根ざす働き方改革の実践知を共有していきたいと思います。